誰にも気づかれなかった──自傷と性的被害の記憶

自傷 性的被害 記憶

自傷 性的被害 記憶 「死にたい」と思ったことは、何度もありました。
だけど、「助けて」と言えたことは──一度もなかったのです。

10代のある日、知らない男に襲われました。
それは突然で、逃げる間もなく、暗い路地で起きた出来事でした。
叫ぼうとしても、声が出ませんでした。恐怖で、体が動かなかったのです。

その後も、誰にも話せませんでした。
打ち明けた瞬間、自分が“汚れた存在”になる気がして。
傷つけられたのに、なぜか「自分が悪い」と思い込んでいました。

だからこそ、自分を責める日々が続いたのです。
ふと鏡を見ては、「消えてしまいたい」と願ってしまうこともありました。
それでも、誰かに見抜かれないように──笑顔だけは忘れませんでした。

本当はずっと、「誰かに気づいてほしかった」のかもしれません。
けれど、それすらも“わがまま”だと思い込み、心を閉ざしていたのです。

体調の異変 性的被害の記憶

それから、自分の体が気持ち悪くなっていきました。
鏡に映る自分が、自分じゃない“他人”のように感じられたのです。
どれだけ服を着ても、肌の奥には“あのときの感覚”が残っていて、どうしても消せませんでした。

だから私は──それを振り払いたくて、リストカットを始めました。
傷をつけている間だけ、あの感覚が遠のいていくような気がしたからです。
痛みだけが、“今ここにいる自分”を証明してくれているようにも感じていました。

もちろん、それで救われるわけじゃないことは、わかっていたつもりです。
でも、ほかに方法が思いつかなかった。
誰にも頼れず、どこにも逃げられず──自分自身の身体にしか、吐き出せなかったのです。

もちろん人には見せられない、自傷 行為・・・性的被害の記憶

もちろん、誰にも見せてはいませんでした。
だからこそ、袖を伸ばして、明るく笑って、友達と話して──何もなかったふりをし続けていました。
「元気だね」「明るいよね」なんて言葉をかけられるたびに、胸の奥がすっと冷たくなるのを感じていたのです。

どこにいても同じでした。
教室にいても、街を歩いていても、私はいつも“透明”な存在でした。
誰にも見えなくて、誰にも気づかれない。そんな日々が、ただ静かに、確実に続いていったのです。

それでも──
何も感じないふりを重ねているうちに、いつの間にか本当に“何も感じない人間”になってしまいました。
恋をしても、何かに心を動かされても、ふと心の奥から湧いてくるのは決まって同じ感情です。
「どうせ私は、汚れている」──その一言が、すべてを台無しにしてしまうのです。

大人になっても、その記憶は消えませんでした。
むしろ、時間が経つほどに──何でもない日常の中で、突然襲ってくるようになったのです。

たとえば、天気のいい昼間。
あるいは、家族の笑い声が遠くから聞こえてくる、何の変哲もない休日。
そんな“平和な時間”に限って、なぜか突然フラッシュバックが起きるのです。

急に、あの路地裏の匂いが蘇ります。
湿った空気。無理やり押さえつけられた腕の感覚。
そして、あの時と同じように──喉が詰まり、息が浅くなって、心臓の音だけがやけに大きく聞こえてくるのです。

「どうして今なんだろう」
そう思っても、理由なんてわかりません。
ただ、過去は終わっていなかった。ただ“黙っていた”だけだったのだと、思い知らされる瞬間でした。

さらに眠れない日々 不眠との戦い

夜は、眠れない。
眠っても、夢の中に“あの男”が出てくる。
目が覚めると、汗で背中が濡れていて──
また朝が来ることすら、怖くなった。

「そんなに辛いなら、誰かに言えばよかったのに」
そう言われたことがある。だけど、それができていたら、
こんなふうに壊れてなんか、いなかった。

壊れたまま、大人になった。
それでも会社に通い、恋をして、何度も別れて、
「普通の人生」を、演じ続けた。
だけど本当は、ずっと誰にも気づかれない“透明人間”だった。

一度だけ本気で思った・・・

一度だけ──本気で死のうと思った夜があった。
けれど、死に方すら決められなかった。
本当は、誰かに見つけてほしかった。
でも、結局誰にも見つけてもらえなかった。

そんなある日、偶然ネットで“似たような話”を見つけた。
匿名のブログに、私と同じ記憶を抱えた人がいた。
初めて、「ああ、私だけじゃなかった」と思えた瞬間だった。

それから少しずつ、自分の気持ちを言葉にしようと思った。
ノートに書いた。スマホにメモした。誰にも見せなかったけれど、
書くたびに──ほんの少しだけ、呼吸が楽になった気がした。

私はまだ、立ち直れていない。
過去は消えていないし、夜はいまも怖いまま。
だけど、“言葉にした”ことで、何かが少しだけ変わった。

誰かに届くかは、わからない。
でも、もし今これを読んでいるあなたが、
「自分も、そうかもしれない」と思ったなら──

今すぐじゃなくてもいい。
いつか、“言葉にして”みてほしい。

透明だった私に、少しずつ輪郭が戻りはじめたのは、
自分の痛みを、誰かに“見せよう”と思えたときだった。

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